2013年10月24日木曜日

予定を一日延ばして執筆中の故郷の大阪市大正区を訪ねた

城崎温泉で一番安い、実家のようなお宿と JazzBar街山荘
http://machi-guevara-kun.blogspot.jp/p/blog-page_22.html


今回の大阪行きは何かはめられたような、予定外に終始した
先ず仲居のお姉ちゃん達が大阪に行って天満の街山荘にも行きたい
ならば、オレも近々天満に帰らねばならんから、ほなその日一緒に行こか
で、話はまとまったが

当日近くなって一人降り2人降り結局オレひとりになってもうた
オレは天満に帰るちゅうコトで会いたい人達に
来てや来てやのメールを送ってますがな
中止はでけへん

大阪の天満に帰るならどっちか言うと週末のほうが
皆さん集まり安いから今までそうしてたちゅうに
仲居のお嬢さん方にほんろうされたみたいっす

でもよ
この日は城崎温泉・街山荘で出会ったお客さんが来てくれた


楽しい長い夜の始まりだす
そやけど何せ平日やん、皆明日仕事やしほとんど終電で帰りますわな
残ったのはミュージシャンのナオとそのお連れ
けど、オレは途中で寝てもうて復活して飲みなおし
もっちゃんが居ったらいつもの如く我がまま好き放題すわ

翌日、昼前に眼が覚めて
天満で色々買い物して、さて、帰ろうとしたのが3時近く
車にキーを入れてひねったがウンともスンとも反応ナシ

そや、昨夜珍しく夜に運転してライト消すのん忘れたんや
もう、これで三回目や、クソッタレと自分を罵倒

チョッと待てよ
今日は火曜日。ならば妹の休みの日や
なるほど、久々に妹達と会えと天がオレに仕向けたと解釈
充電したりモタモタしてたら夜の国道を走らなアカン
夜の運転は苦手やとアッサリ一日延期ときたもんだ

夜、環状線で弁天町まで行って
2人の妹のそれぞれの住まいを訪ねた

オレが70で69と66の妹達、ジジババやん



下の妹の家族だす。娘と孫。お恥ずかしい~~ ^ ^ゞ

さて、何で珍しく夜の大阪をドライブしたかと言うと
ほぼ10年間ずっと書き続けている小説『征生男・惜春』
実はこれはオレの16、17歳の頃がモデルで場所は大阪の大正区

先ず昼間に大正区の大運橋界隈を隈なく歩いた
様変わりしてほとんど昔の面影も留めてへんかったけど
あの路地この路地と想い出がいっぱい張り付いている甦る


妹のとこで見せてもらったオレが16の頃の家族の写真すわ
右の少女が上の写真の婆さん、即ち末の妹

小説に出てくる「照美」は実名で当時オレよか二つ年上やった
どうしてももう一度会いたい消息を訪ねにかつての彼女の家のあった所にいった
50年以上も昔。全ての建物は変わりはしていたけど
路地も棟も良く似た風景。熱いものが胸にひろがる


では、長編小説『征生男・惜春』の一部を小出しで~す




大阪の大正区。工場と煤煙に煙る下町。
貧困と差別と如何わしさが、腐った魚の腸のようにむせる下町。

下町の路地を入ると、古びたどう見ても如何わしい一軒の小さな旅館があった。
飛び込むように入って行き、薄暗く踏むと軋(きし)む狭い階段を駆け上がった。
廊下も薄暗く薄汚い。
征生男は襖(ふすま)を思い切りをパッと引いた。
裸電球の淡い灯りの下、布団を数枚敷き詰めた上に一人の少女を囲んで数人の少年。皆、征生男と同年齢。勝之もその中に居た。
タバコの臭いに汗と男女の精液の臭いがムッと鼻をつく。
少女はほぼ全裸。少年の半数も全裸に近い。性遊戯の濁った絵巻。

 オレンジ色に輝き大きく膨らんだ夕陽が、正に沈もうしている方に向かって駆けた。
 酒屋を横切り、散髪屋の前を駆け抜け、駄菓子屋の角を曲がり、
 二つ目の横丁を入って直ぐの旅館。
 不意を突かれ狼狽も露わに慌ててズボンを履き、服をまとい、
 勝之は征生男の後に従った。
 「お前等も直ぐ帰れ。警察が来るど」
 征生男は残った少年達への一喝を忘れなかった。
 廊下に飛び出し、手すりを支えに階段を数段ずつ飛び降りて旅館を出た。
 来た方角とは逆に早足で歩く。
 低いひさしが連なる路地を抜け、市電の通る大通りに出た。
 そこで、初めて歩調を緩め征生男は勝之と向き合った。



車輪の響きは遠ざかって行った。
怒りが胸を突いてきた。力を込め歌子の肩を押した。
「歌ちゃん、ゴメン」
 突き放したような形で肩を確り捕まえ言えた一言。
 

 走った。商店街を抜け、路面電車の通りに出た。

電車の姿は既にない。停留所に人の影は無かった。
停留所から自分の家を目指して走った。
闇の中でぼやけた町のた佇まい。
家々の屋根と暗い空との境界が二つの闇色で浮かぶ。
僅かな街灯に浮かぶ路上に人影はないか、走った。
えびす食堂を曲がった。
路地の向うは家々の小さい灯りが点在しているが淡い闇がおりている。
人影はない。

走った。路地の突き当たり、道は右に折れて数件先が照美の家。
家の前まで走った。長屋の中程。それが照美の家。
二階に灯りが点された。照美だ。
どうする、淡い闇が降り静寂が沈み込んだ軒並み。
子供の頃以来訪れていない照美の家。

立ちすくみ、二階を見上げる。
低い軒だから呼べば届きそうな距離。
それは照美だけに届くのではなく、両隣にも路地を挟んだ向かいの家々にも届く。
敗残者のように立ち尽くす。見上げる窓。窓の灯りが幻想的に広がる。

夜空の闇に僅かな星。星が風の中で冷たく瞬いている。
10日以上も待ち焦がれたこの一瞬を歌子に阻止された。
後、一分も早ければ照美に逢えたのだ。
諦めを風が運んできた。歌子を憎いとは思わなかった。
 

 

 
 

 

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