昨夜、片手にワンカップ大関の一人の老婆が訪ねて来た
頭髪は極端に薄く、それでもね女であるように
白髪を茶髪に染めている
よく見ると歯は上の前歯が三本あるきり
いきなりテーブルの上に折れ曲がった一万円札を置いて
「コレで足りるか?腹減った。とにかく眠い。その前にビール」
と、へたり込むように椅子に座った
フラフラしてたからそこそこ酔っ払った感じ
歯が殆どない、通常の食い物ではアカンやろ
蕎麦を茹でて釜揚げで出し、
頭髪は極端に薄く、それでもね女であるように
白髪を茶髪に染めている
よく見ると歯は上の前歯が三本あるきり
いきなりテーブルの上に折れ曲がった一万円札を置いて
「コレで足りるか?腹減った。とにかく眠い。その前にビール」
と、へたり込むように椅子に座った
フラフラしてたからそこそこ酔っ払った感じ
歯が殆どない、通常の食い物ではアカンやろ
蕎麦を茹でて釜揚げで出し、
惣菜に数種の野菜を小刻みにしてオムツを作った
一口がドッサリ大量に口へ押し込み
歯のない口でモグモグしてすぐさま飲み込む
その様はまるで『千と千尋』の湯ババを彷彿させる
その時点でオレは自分の不運を嘆いた
二日間で30人が帰った後温泉に浸り
汚れを取り疲れた身体を労ろうとしてた矢先の事
選りに選ってこんな不気味な老婆の相手をせなアカンとは
蕎麦を半分ほど平らげオムツも完食、ビールも飲んで落ち着いたのか
次は捲し立てるように喋り出した
歯のない口で大声で早口で喋るから空気が漏れて聞き取りにくい
何度も「えっ?何で?」と聞き返すうちに
淋しい悲しいものにオレは汚染されていた
一週間ほど前まで城崎温泉の旅館で10年以上働いてきた
一口がドッサリ大量に口へ押し込み
歯のない口でモグモグしてすぐさま飲み込む
その様はまるで『千と千尋』の湯ババを彷彿させる
その時点でオレは自分の不運を嘆いた
二日間で30人が帰った後温泉に浸り
汚れを取り疲れた身体を労ろうとしてた矢先の事
選りに選ってこんな不気味な老婆の相手をせなアカンとは
蕎麦を半分ほど平らげオムツも完食、ビールも飲んで落ち着いたのか
次は捲し立てるように喋り出した
歯のない口で大声で早口で喋るから空気が漏れて聞き取りにくい
何度も「えっ?何で?」と聞き返すうちに
淋しい悲しいものにオレは汚染されていた
一週間ほど前まで城崎温泉の旅館で10年以上働いてきた
一週間ほど前にクビになって今日は給料を取りに来たと
給料を取りに来た、メッチャ正しい表現
世間ではよく給料を貰うと言う、それは絶対に間違い
働いた正当な報酬は獲得したものであって貰うのとちゃう
その旅館は運営の危機に陥っているらしい
お客さんは来るがスタッフが極端に不足して
やって行けないと言う
なら猫の手も借りたい状況で何でアンタをクビに?
と、言いかけたけどやめた
旅館でどの部署に居たのか、けどこの風貌では接客業はね、、、
失礼ながらそう思いながら更に話を聞かされる
45になる息子が居てずっとニートして養ってると
何?それって逆やろうと、つい声が大きくなった
そんな息子はもう係あったらアカン。逆や親の面倒見て息子や
このおばあちゃん、オレと同い年やった
そやけど、オレ的には遥かに上の老婆で
生きられてる自体が不思議なくない年老いて荒んでる
若い頃惚れたあの子も会うとこんな婆さんになってるかもと
現実ってホンマに厳しく寂しい〜
もう息子のトコには帰れへん、明日から何処かへ行く
一年位は生きていくだけの貯えもある
えっ、一人でやってんのん?ほな私を雇って
いやいやそれは無理や、一人でも持て余してんのに
そう、けど来て良かった、いっぱい話を聞いてくれてありがとう
寝るわと言うて二階の部屋へ、もちろん腕を持ち支えて階段を一緒に
今朝、7時頃に起きてきてドンと座ってタバコプカプカ
「お茶いれるね」
「要らん、ビールちょうだい」
「朝ご飯も作るわ」
「要らん、ビールちょうだい」
「何か食べんとアカンやん」
「要らん、帰るわ。傘一本ちょうだい。コレで足りるか」
ポケットからまた折れ曲がった一万円札をテーブルにポイ
「いやいや夕べもうてるしおカネは済んでるよ」
「そうか、帰るわ」
意外としっかりとした足取りで雨の中に入って行った
小ちゃい小ちゃい体の足元はサンダルで靴下も履いてへん
春の雨、そんなに冷たなかった
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