2015年4月29日水曜日

一週間の紀行、その一

もうメッチャ昔のコトやねんけど、そう時は80年代。
大阪のアメ村でライブハウスをしてた頃、
5年間くらい毎年アメリカのロスへ毎回一週間くらい行ってた
アメリカの雑貨を直接仕入れに

その時以来初めてこの一週間旅をしたぞ
信州木島平村で二泊、山代温泉で一泊、大阪で三泊
この旅は今後のオレを大きく変えるコトになった。

信州では唯一無二の親友、中沢牧場の主、
久夫と二日間ベッタリ一緒やったな、これは今までになかった
と言うのも、彼は足を負傷してて働ける状態ではなかった
で、仕事のでけへん久夫とずっと居れた


彼どころか、妻の愛ちゃんも腕、肩を骨折してて入院中
お婆ちゃんは骨粗鬆症で思うに動けない
三人家族の全員が故障と中沢家は大変なんや
ワンちゃんと言う愛ちゃんの幼馴染が居る
もう相当古い時代から中沢牧場に通いでお手伝いをしている
中沢家のこの一大事に通いを止めてずっと泊まり込みでいた
何しろ乳牛百何十頭の大牧場。
主夫妻が働けぬとあっては、ワンちゃんの存在は大きい

二日間、ワンちゃんと初めてくらい多く語り合った。
小高い山の頂の緩やかな小さな盆地に中沢牧場がある
牛舎の糞を総なめに働くブルのエンジン音以外ほとんど音がない
周りはカラマツ林と雑木に囲まれ空が思いきり開け自然のゆとりを湛えている
冬は半端じゃない積雪で白一色白銀の世界
 ところが今回来てビックリ
カラマツがことごとく伐採され周りの丘陵は裸やんけ
村が庁舎のようなものを建てようとして伐採したが計画を頓挫させたとか
とかく行政というのは無責任でええ加減なコトをする

オレが訪れたその日を境に全国的に冬をが去り初夏の日差し
空は抜けるような青さ、陽射しがさんさんと降り注ぎ
木立を渡る風の音と共に小鳥たちの絶え間ないさえずり
牧場の背後には木島平スキー場を抱え込んだ高社山が悠然とそびえ立つ
かつては冬は毎日のように滑っていたよな〜

足元には相変わらず十数匹の猫がたむろしている
買っているという訳とはまた違う
そやから家には絶対に入れへん
ただ餌だけは時間を決めて確実に与える
それはかなり昔からの事で猫の数は自然淘汰されている
慣れない手つきで食事の支度をする久夫の後姿をニヤリと見て
「よしっ、オレが一つプロの料理を作ってやるか」
何種類かは余分に作って数日分を用意もした。

久夫は足の事故以来酒を断っていた
オレの来訪でオレの手土産のワインをちびりちびり飲む
ワンちゃんは下戸、ってコトはオレ一人がウイスキーをあおる
外は満点の星空、立小便も清々しい
此処はオレの心の故郷、そして中沢家はオレの実家のようなもの
話は尽きぬ、久夫があくまでふざけ通す
ワンちゃんとのお喋りの中に思いも寄らぬ癒しを味わって
数年前、逝ってもうたオレの次男の話でオレは涙した

翌日、久夫と飯山日赤へ愛ちゃんをお見舞いに
男以上に働いていた愛ちゃん、笑顔の中に険しい表情を隠さなかった
愛ちゃんの前に行くといつもピリリとして怖い存在やった
腕を吊りパジャマ姿の愛ちゃんが小さいのがより小さく見えた
その表情を見て、オレは一瞬不思議なものを見ていた
なんと穏やかな優しい表情、かつてこんな表情は見たことはなかった
その顔が何故かオレのオフクロを思い出させた

オレたちが此処に居た頃、愛ちゃんは毎日のように寄り道をしていた
妻の栄子と愛ちゃんは尽きることのないお喋りをしていたな~
その時ですらこんな安らかな表情は見たことがなかった

不慮の事故で入院生活を強いられたとは言え、
こんなにも長い間仕事から遠ざかったコトはなかった
それが、仕事のない毎日が、安らぎになっていたんや
今更のように仕事だけの日々がストレスを蓄積するんやと


馬曲温泉に行く途中
全焼して、その後再建に挑んだオレの山荘。
10年の歳月を費やしたにも係わらず、再建を放棄して城崎温泉に行った
その途端、積雪で見事に崩壊。ペシャンコになった
片づける余裕も意味もなくそのまま放置している
山麓に無残で哀れな有様は今なお変わらんままや
一年半ぶりに見る。

思いをずっと注ぎ込んできた。
全焼するまでは、ここでは人生最大に輝いていたオレ
それを再現すべく10年間も頑張り情念を注ぎ込んできたんや
崩壊して無残な有様を見る度にココロはおののく
カラマツ林から風がそよと渡ってって来てオレの胸中にまで通る
誰も見ていない安心感から涙が自然に湧き上がる



それを味わうための旅なのか、ほぼ毎年来ているんや
遠いよ、信州は遠いよ。なのに通ってきた。もう止めよう。未練、悔恨、、、、そんなもんが何になんねん
悲しみと涙しか出てけえへん、そんなもんにいつまで寄り添うんや
久夫にも会いたい、そやけど、もうここへ来るのは止めよう

二日間の滞在はあっという間に過ぎて別れの時が来たいつも笑顔もおどけも絶やさない久夫。
ワンちゃんがこの度,殊のほかオレに癒しを与えてくれた
間もなく70近いお婆ちゃんやのに娘のような明るさと元気
愛ちゃんの思ってもみなかった安らぎの笑顔

いやいや、やっぱしまた来るで、ここはオレの心のふるさと

沿道の桜の向こうで北信三山の妙高山が
また来るんやでと言っていた



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