「えっ、40秒で? 流石プロやな。オレなんか5分で早い方かも」
22才で喫茶店を起業して50年近くこの稼業をやってきた
途中9年間信州木島平村でスキー場のロッヂもやり
旅館業は初めてではないが
スキー場では毎年牛の枝肉一頭を購入してさばいてお客の食卓に
つまり、とさつされた牛が縦半分に割られ
前足、胴、後足に六等分されたのを買っていた
一つの枝肉は50~60kgはあったやろう
それを凍てつく冬に巨大ログハウスのデッキでさばく
手はかじかみ感覚がなくなるほどの状態での作業はまるで格闘技みたいやった
スキー場の山では海の幸とは無縁で鮮魚もカニもなかった
長年続けてきたBARという飲食業にもそれは稀やったぞ
ここ城崎温泉にやってきて初めて生きたカニさんと対面
まな板の上にうつ伏せに乗せて足を一本一本切り取るんやが
ほとんどのカニさんは両方の足でまな板をガッチリ抱え込み抵抗なさる
ごめんねゴメンネ、思わずココロから謝るオレであって
で、難儀なのは初めてのカニさんへの虐殺行為ゆえに
見よう見まねどころか見た事もないし
あぁでもないこぅでもないとカニさんを分解する作業に
懸命に取り組み時間ばかりかかるんでござる
来月で城崎温泉・街山荘オープンは丁度一年
ま、二度目のカニシーズンを迎えた訳よ
その間、地元の人、板さん等から
カニの種類、扱い方、さばき方と聞かされてきた
けどよ、実際に見るコトはなかった
昨夜、近くのホテルの板さんが久しぶりに飲みにきた
彼は流木のちょっとしたアーティストであって
流木のコトを教えてくれたり
ある日、
ちょっと取りに行って来ると飲みかけのビールを置いて出て行った
ヨッコラショと担いできたのが流木だけで造ったイーゼル
なかなかのモノで、それを店頭のメニュー置きにしている
で、昨夜、彼に一度カニを料理する時に厨房を見学させて~
甘えた声でお願いしたって訳
本日の昼下がり
「カニ、今からやります。来ますか」
もちろん、行きまっせー
大きいホテルの厨房
いつもは五人の板さんが動いているという
今日はお客さんが少ないので彼一人
冷凍庫、冷蔵庫も大きい。まな板もデカイのが幾つも
ガスもオレが使ってるようなショボイのでなく大きく火力もスゴイ
ま、ここではプロの仕事の裏は明かせないが
カニの入手経路、カニの仕置きの仕方、茹で方等々をご教授くださった
さて、これよりカニをさばいて進ぜよう、ま、得とご覧あれませ
一匹のカニさんをまな板の上に
手入れされ研ぎ切った出刃がまるで彼の腕の一部のように動く
あれよあれよと見てる間にカニさんをモノの見事に分解
40秒、正に40秒
そして
盛り付け。茹でカニ、カニすき、カニさし、
七種の刺身を手際良く切って見せてもくれた
更に更に、おまけに
カニ専用の出刃包丁も一本進呈してくれたがな~
いっぱい貴重な勉強をさせてもらった上に包丁まで
今日は実に良い最高の日でござっぞ
これで
次に来られるお客様には少しは粋な盛り付けが出来まする
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